無限の樹形図 1つの命 みんなの命
「世界中沢山の子ども達を救いたい」
「子ども達にはたくさんの未来がある」
そういう想いを持って様々な活動をしている人たちがたくさんいます。
そこには大なり小なり「子ども>大人」という優先付がある様に感じています。
僕自身、NPO法人 地域医療連繋団体.Needsでの医療教育活動を学校教育の場からはじめたのには、少なからずそういう想いがあったからかもしれません。
しかし、必ずしも
”直接”子どもの”命”を助けることだけが子どもを”救う”ことには繋がりません。
その一つの理由としては、
子ども達は一人では生きていけないということが上がります。
いくら子どもの病気を治しても、親がいなければ子どもは生きていけません。
逆に5人の子どもを養っているお父さんを救うことは子ども5人の命を助けることに繋がります。
つまりは、
「親の命を助けること」も「子どもの命を助けること」につながります。
大人を蔑ろにすれば、たくさんの子どもを蔑ろにすることになります。
子ども>大人という優先付はそもそもできないのです。
子どもであろうが、大人であろうが高齢者であろうが
年齢による命の重みに差はありません。
命の重みはみんな平等だと思っています。
また、子どもを救う上でもう一つ考えなければいけないことがあります。
それは「成長の支援」です。
命を助けても、その後健やかに成長できる環境がなければそれは本当の意味で子どもを救ったとは言えません。
そして、成長には身体的だけではなく、精神的、社会的といった要素があります。
そのためには、医学的な支援だけでなく、教育や生活など社会的な支援も同時に考えていかなければいけません。
子どもの命を助けることはもちろん
同様に大人の命も助け
成長のための社会支援を行う
それが人の命を救うということであり、
それら全てを含めて医療支援と言えるのだと思います。
特定非営利活動法人ジャパンハート カンボジアでは
今月、Asia Alliance Medical Centerに新しく小児病棟(小児医療センター)が増築されました。
この新病棟は小児がん患者さんを含めた、子ども達の病気の治療も行っていくことを役目としています。
しかし、
その子達を救うためには入院中の家族のケアも必要となります。
カンボジアでは「患者さんが入院するということ」は「家族の生活の場が病院のある地域に移ること」と同意です。
元々、裕福ではなく田舎の方で暮らしいていた方々にとっては、子どもの入院費が賄われたとしても、食費などが高く、家族が生活できない場合もあります。
実際、Poor cardなどで治療費が無料になったとしても、プノンペンで生活ができないがために、高度医療機関での治療が受けられないという患者さんもいます。
たくさんの子ども達を救うためにも、僕たちはその家族の生活の支援をどう並行して行っていくかも考えなければいけません。
入院中の子ども達の教育支援や退院後の生活支援なども考えていかなければなりません。
それだけに限らず、新病棟開始に当たっては課題がもう山積みです。
ただ、やはり子どもを救うための場が新しくできるということは素晴らしいことだと感じていますし、この過渡期である今、ジャパンハートで関われることを心から嬉しく思っています。
この事業が結果としてベストな形になるように、期間限定のボランティアという姿勢ではなく、いちスタッフとして関わっていきたいと思っています。
AAMCは子どもから大人まで経済的な理由で医療が届かない人たちに医療を届けることを役割としています。
毎日たくさんの患者さんを診ています。
助産師さん達を中心に妊婦健診、母親学級、産後育児支援などの母子保健事業にも力を入れ始めています。
そして、今、小児がん患者さんの命を救うことを大きな役割とした小児医療センターが増築されました。
AAMCは経済的に貧しい子どもから高齢者まで、(正に揺り籠から墓場まで)年齢に寄らず、限りある資源の中で最大限の医療を提供していきます。
そして、それが僕たちが現地で活動できる様に応援して下さっているたくさんの方々の想いを形にすることだと思っています。
『1人の患者さんの命を救うことがその家族を救うことに繋がります。
大人を救うことが子どもを救うことに繋がり、子どもを救うことが大人を救うことに繋がります。』
医療の現場にいると当たり前の様に日々感じることができることですが、この感覚は誰もが同じに持っていて欲しい感覚です。
最後に
最上の名医という漫画の中に「無限の樹形図」という言葉が出てきます(突然漫画の話ですいません。漫画は僕の教科書の様なものでして)。
ひとり幼い命を助けることにより、
その子供が大人になり、
結婚し子供を産み育てる事により、
無限の広がりが産まれる。
もしその命を無くす事で、
これから広がる「命の樹形図」が途切れる。
幼い小さな命が「無限の樹形図」を作り上げていく。
と言う主旨でした。
小児科医の漫画でしたので、子どもに焦点が当てられていますが、
これは全ての命に等しく言える様に思っています。
経済的に貧しい途上国では特に。
1つの命はたくさんの命に繋がります。
1つの命を失うことはその後に続く命の樹形図を途切れさせることになります。
医療とはそれが途切れない様に支援すること。
それは医学だけではなく、たくさんの支援から成り立っています。
Needsでは
人が健やかに暮らしていける様に
そして、無限の樹形図を途切れさせない様に
医学以外の面での支援
そして、それらを医学と統合させること
を担っていけたらと思っています。
今、ジャパンハート、そして、ニーズという二つの目線から医療者として社会を見ることができていることをとても幸福に感じます。
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