人生の再出発
3年前まで、一人で何でもできるようになることが自立だと考えていた私は、何でも挑戦し、夢を語り、時間が足りないほどだった。そして、そんな自分に幸せを感じていた。
だが、私の幸せの価値観は、この3年間で大きく変わった。
海外で働き、海外での生活を体験し、そこで交通事故に遭遇。緊急搬送され、日本に戻った。
4ヶ月の入院をし、リハビリをし、そして体に後遺症が残った。
毎日、朝起きるたびに回復していることを願い、体に問いかけた。
だが、どんなにもがいても、どんなに悔しんでも昔の体には戻れない。
当たり前の生活を送ることができない。昔のことが思い出せない。
命に感謝して、どうにかこの悔しさから逃れていた入院生活。
でも、長い人生がまだ待っている。それならば、この体を運命として受け入れ、生きていく覚悟をするしかない。神様に生かされた命なのだから。
私の体が昔の状態ではない今、人の手を借りて初めて安心した生活を送ることができる。
そう思えた瞬間、今までとは違う世界が見えてきた。
周りで私をサポートしてくれている人々の姿、そして笑顔。
家族、親戚、友人、皆が私のことを考え、動いてくれている。
そして、周りの方々のおかげで、笑顔になり勇気をもらっている。
幸せがそこにあった。
昔を思い出すと、今の自分自身との違いに気付く。
やりたいことをやり続けてきた20代。夢や理想を語っていただけで、周りの方々のことは、考えているようで本気で向き合っていなかったのかもしれない。
今思えば、あの頃が恥ずかしくなる。
こんなに私の周りには支えてくれる方々がいるのに、私はその方々へ何もできていない。
30代に入った今、これから大事にしたいことに出会い、そして、気付かせてもらった。
あの時、即死で日本へ帰ってくることができなかったかもしれない命。
後遺症は残っても、歩けず、記憶を無くしていたあの時から考えると、ここまで回復させてもらえた。
家族や大切な方々を泣かせ、沢山不安にさせてしまった。
周りの方々をこれ以上悲しませてはいけない。
ここからは、周りの方々のサポートをし、私の恩を返していこう。
そして、生かされた命を無駄にしない生き方をしよう。苦しんだ日々に恥じない生き方をしよう。
あの事故に後悔を持ち続ける人生ではなく、前を向いてこれからの人生を強く歩んでいこう。
そう思えることが、幸せだと感じる人生を送ろう。
ここからが、私の人生の再出発です。
松川 梓沙
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